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2024年12月10日火曜日

読書 「大絵画展」望月涼子

    鮮やかなどんでん返しに驚愕!


著者:望月涼子
出版:新潮文庫

バブル期にイギリスのオークションで日本人に180億円で落札されたゴッホの『医師ガシェの肖像』・・・日本のバブルが弾けると共に、この絵は銀行の担保物件となって誰の目に触れることもなく倉庫の中に眠っていた。
時を同じくして、デザイナーの荘介とスナックオーナーの茜は、それぞれが多額の借金の挙句、投資詐欺事件に巻き込まれ、さらに膨大な借金を背負う。追い込まれた二人は絵画強奪を持ちかけられ……息つく暇ない騙し合いの末、最後に笑うのは・・・!?

痛快な「コン・ゲーム」小説で、テンポのよい流れで、物語はどんどん進んで最後の最後で大どんでん返しがあり、読者をあっと言わせるのがミソ。
  ※「コン・ゲーム」とは、コンフィデンス・ゲームの略。標的とする人物を
   信用させて働く詐欺のこと。
ただ登場人物が多く(冒頭に人物一覧表があるが、そこにも書かれていない人物も登場します)、ストーリーは緊張感がありテンポよく話が進み、注意して読んでいないと話の筋を見失って、あれれっ?と思うこともあります。
ただ、最後の方で、黒幕となる人物が解説するように話をするので全体が分かる仕掛けになっています。

〈追記1〉
贋作問題やヨーロッパでの絵画の流通の価格設定の裏側や、ゴッホの事についてもいろんな事実が披露されます。
ゴッホについては、「彼は生涯、社会から孤立していたが、生活に困ったことはない。孤独な魂の放浪と言われる彼の人生は、実家の財力に支えられて、自分探しをし続けた自意識過剰な男の収拾のつかない時間経過でもある。名を残した者には必ずドラマとそれらしい解釈が与えられる。その衣装を脱がしてしまえば、彼に何が残るだろう・・・ゴッホはその1枚の絵が180億円の価値を持った不遇の天才だったのか、400フランの絵をたった1枚売っただけの無能な人間だったのか・・・」と著者はいろんな問題提議もしています。
〈追記2〉
冒頭に「ポール・ニューマンとロバートレッド・フォードに捧ぐ」とあり???
全部読み終えると、映画での「コン・ゲーム」の代表作であり、二人が共演した「スティング」のことだと分かりました。
〈追記3〉
Wikipediaで、「医師ガシェの肖像」を調べてみると、この小説の元ネタになった背景があるのが分かります。

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