「テレビの国から」
評価:★★★☆☆書名:テレビの国から
著者:倉本聰
出版:産経新聞出版
『おとなのデジタルTVナビ』(産経出版)の2015年8月から19年8月まで連載したものに加筆、再構成したものだが、『ドラマへの遺言』(新潮新書)と内容がダブっている部分が多く、密度も『ドラマへの遺言』の方が充実している。
もし、この2冊を手に取って、どちらを選ぶかを迷っている人がいれば、迷わず『ドラマへの遺言』をお勧めいたします。
内容は、
第1章 昭和から平成、令和をつなぐ物語 「やすらぎの郷」「やすらぎの刻」
第2章 戦後日本を総括する物語 「北の国から」
第3章 東京を離れて見えた物語 「6羽のかもめ」「前略おふくろ様」他
第4章 富良野がつないだ物語 「昨日、非別で」「風のガーデン」他
第5章 若き日の物語 「文五捕物絵図」「ガラス細工の家」他
第6章 これからの人に贈る物語
第6章では、昔のようなテレビを見る習慣が崩れた今でも、テレビ局は「視聴率第一主義」「ゴールデンタイム信仰」「F1F2層(20~40代の女性)のターゲット主義」から抜け出せないでいることに対して痛烈に批判し、番組の質が堕ちていくことを嘆いている。
テレビという媒体が生き残るためには、上記の考え方から脱却しなくてはならないと提言している・・・これは著者が東京を離れた北海道にいるから見えてくるのかも知れない。
脇道にそれて、印象に残っているのは、「人間的にはいろいろ言う人がいるが、(ショーケンは)役者としては天才だった」と、著者はショーケン(萩原健一)をかなり評価していることだった。そして「いしだあゆみ」の言葉を紹介している。「いしだあゆみがショーケンと結婚していた頃に、『364日はひどい人だけど、1年に一度の笑顔で、一緒になってよかったと思う』」
・・・若い時に「いしだあゆみ」のファンだった私からすれば、言って欲しくないセリフです💔・・・また、こういう女心は私には分からない???
(「ドラマへの遺言」が上記に出てきましたので、以下参考にご覧ください)
2019-3-21
ド ラ マ へ の 遺 言
著者:倉本聰・碓井広義出版:新潮新書
倉本聰ほど「伝説?」の多い脚本家も珍しい。
思い浮かぶものを羅列しても「国民的ドラマの大ヒットメーカー」「NHK大河ドラマの降板」「富良野への移住」「台本の一字一句にも拘り修正を許さない」「キャスティングにも口を出す」「80歳を超えてからのシルバータイムドラマの創出(やすらぎの郷)」・・・等々
その倉本聰へ碓井広義が行った計9回のインタビューを纏めたものが本著である。
インタビューなので読みやすく、倉本聰の考え方やそれぞれのドラマの舞台裏など面白い話がわんさかと詰め込まれており、その時代その時代に果敢にチャレンジしてドラマの可能性を広げてきたことが分かる。
裏話のおもしろかったものを挙げると、直近のドラマの「やすらぎの郷」のキャスティングの話は面白かった。
主役の石坂浩二の「元ヨメ・浅丘ルリ子」、「元カノ・加賀まりこ」のキャスティングは、前もって浅丘ルリ子と加賀まりこに話をしていた時から石坂浩二の名前は出ていたそうで、倉本が「あなたたち平気なの」って聞いたら「全然平気よ」って言うので、あとはとんとん拍子に決まったそうだ。
また「石坂浩二演じる『菊村』は倉本聰と阿久悠と久世光彦(演出家)等の同世代の複数の人間の要素を詰め込んでいるので、菊村を僕(倉本聰)だと思われるのは迷惑な話でね。女房も生きていますし、駆け出しの女優と浮気したなんて言われちゃうと困っちゃう」
それにしても84歳の倉本聰が「やすらぎの郷」の続編を書きあげ、その「やすらぎの刻~道」が4月から始まるのが楽しみだ。(2020-3末で放送終了)