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2024年4月20日土曜日

読書 「紫式部と藤原道長」倉本一宏

歴史学者のいう歴史上の存在とは・・・

著者:倉本一宏
出版:講談社現代新書

著者は、10年程前に「藤原道長の権力と欲望」という本を著しているが、2024年の大河ドラマ「光る君へ」の放映を機に、上記の本の増補版を作るのと同時に、新たに紫式部と藤原道長を絡めて書き下ろしたのが本書である。

全体の流れは、タイトルの通り、歴史的な流れに沿って書かれているので、ここでは省略し、歴史的事実という定義について、面白かったので、以下に書いてゆきます。

平安時代の藤原道長の時代でいえば、「紫式部」「泉式部」と称される女性は、確実に存在したが、「清少納言」は100%存在したとは言えないと・・・
何故かというと、歴史学者は、歴史的な一次資料しか信用していないということなので、そういう結論になるそうです。

この時代の一次資料というのは、藤原道長が書いた「御堂関白記」、藤原実資の「小右記」、藤原行成の「権紀」を指します。
紫式部は、実資の「小右記」に「藤原為時の女(むすめ)」と、記載されているので問題なし。和泉式部は、道長の「御堂関白記」に「紅(こう)式部」として登場している。
清少納言については、交流があったとされる行成の「権紀」にはまったく記載がなく、他の一次資料にも名前が全くないので、100%確実とは言えないという。
本人が書いたと称する「枕草子」に登場するから、実在したなどというのは、歴史学では通用しないそうだ。
但し、確実に実在した紫式部が書いた「紫式部日記」に“散々悪口を”書かれているから、恐らく実在したであろうという程度のものだそうだ。

歴史学というのも因果な仕事のように思えます。