桜と雪の共演
この冬は暖冬続きでしたが、今日3月29日は思わぬ春の雪に見舞われました。
散り始めた桜がまだ少し残っており、雪とのコラボが出来上がりました。
撮影地はいずれも元荒川堤防(埼玉県)
「関西人の正体」
評価:★★★★☆
書名:関西人の正体
著者:井上章一
出版:朝日文庫
内容は、
1.関西弁の真実
2.大阪の正体
3.京都の正体
4.関西全体への大誤解
と、「関西論」を展開しているが、殆どが関西の没落を嘆く、自虐的なものであるが、その議論の展開がユニークであり、面白い。
この本が1995年に出版されてから、25年。
ベストセラーとなった「京都ぎらい」の素材が随所に見られるが、ただ幾つかの矛盾というか、特に京都についての著者の考え方に大きな変化がある。
2016年の「朝日文庫版へのあとがき」の冒頭で、著者は「ひさしぶりで、自分が書いたこの本を手にとり、書き出しの第一行目に驚いた。なんと、そこにはこうしるされている。『私は京都に生まれ、京都に育った。今も京都に住んでいる』・・・」
この後、著者は「京都ぎらい」で、自分は「京都人ではない」と、述べた事との違いを、れんめんと言い訳をし、自分の考え方の変遷を説明する。
やはり、人間25年も経つと、意見も立場も変わるんやなあ・・・と思った次第です。
他の面白い箇所をいくつか紹介します。
【関西弁】
「京都の若いお嬢さんから、こう言われた。『先生、先生は研究者なんやし、関西弁はやめはったほうが、ええと思います。値打ちを下げて、損するんと違いますか』と」
また、著者が
日頃から愛読している中野翠は、こう書くのである。「抽象度の高いことを語りあうシンポジウムなどでは、関西弁を使わないでほしい。その場の空気が乱される。卑俗な言葉で、場の気分を混乱させる手段として関西弁を使うにいたっては論外。つつしんでほしい」、と。
【食いだおれ】
「大阪の食い物といえば、うどん、たこ焼き、お好み焼き・・・なんとも安っぽいライン・アップである。いわゆる高級料理はひとつもない。この顔ぶれに、ホルモン焼きあたりがつけ加われば、安価イメージは決定的。安い食いものの街という大阪像は、不動のものとなる。
さて、大阪には『食いだおれ』の街という評判がある。だが、どうだろう。うどんやたこ焼きなんかで、『食いだおれ』がはたしてできるのか・・・『食いだおれ』とは、食道楽により家の資産を使い果たすことを意味する」
最近の関西の若い世代では「うどん、たこ焼き、お好み焼き」で「食いだおれる」と本気でそう思い出していると、著者は嘆く。
【関西という言葉の意味】
さらに「近畿・畿内」「関東」「関西」の意味を解読することによって、ますます著者の自虐感は熱気を帯びる。
「民度の高い文明圏が『畿内』、そして関所の向こうにある野蛮な地域が『関東』だった。明治以前は『関西』という言葉があまり使われなかった。だが、今では『関西』という言い方がすっかり浸透した。『畿内』がすたれ、『関西』が普及している。この現状は、関西地方が文化の中心から辺境へ落ちていったことを、物語る」
かなりどぎつい自虐感の詰まった本であり、私のように面白がってハマる人がいる一方で、癖のある議論展開に嫌気がさす人も多いと思われる本なので、良く考えてから読むように願う次第である。
因みに「翔んで埼玉」の我が家での公用語は「関西弁」であり、標準語を喋るはずの娘は、時々怪しげな「関西弁」を喋っている。