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2022年9月20日火曜日

街道を撮りにゆく 彼岸花(彩の国・元荒川)

         豪雨の中での撮影


9月18日台風14号の影響により、途中から滝のような豪雨の中での撮影となりました。
衣類・長靴はびしょ濡れで、カメラも被害甚大です。








2022年9月1日木曜日

読書 白洲次郎 占領を背負った男(上・下)

著者:北康利
出版:講談社文庫  

白洲次郎の名前は、これまで聞いてはいたが、この本を読むまでは、詳細は知らなかった。むしろ妻の白洲正子の方が有名かも知れない。
「名建築で昼食を」というTV番組があり、その中で旧鶴川村(現町田市)の茅葺農家を改造した「旧白洲邸(武相荘:ぶあいそう)」が取り上げられた。そこを訪れた時に、偶然この本を買ったのがきっかけである。

白洲次郎は、政治家でも、官僚でもないのに吉田茂の懐刀として、終戦直後の混乱期にGHQとの交渉窓口となり、「従順ならざる唯一の日本人」として本国に打電されるなどのエピソードには事欠かない。
またサライ等の雑誌で特集され、NHKのドラマで何度も放映される等、筋を通した生き方や英国流のダンディリズム(ケンブリッジに9年間留学)と言った魅力で、それなりに人気があるようだ。(もっとも吉田茂と同じで、死後評価が上がったという意見もある)

本書は、白洲次郎の評伝として、「山本七平賞」を受賞しているだけあって、テンポよく読みやすく、生身の白洲を見ているようなリアル感がある。
もっとも白洲次郎に関する一次資料は、ほとんど現存しておらず、実像としての次郎は謎が多い人物であり、関連本だけでなく、生存者へのインタビューなども交えて、白洲に迫ろうとした著者の苦労が想像される。

本書は、白洲の幼少期から始まっているが、圧巻は、吉田茂に抜擢されて、敗戦後のGHQとの交渉窓口となったことである。この時に憲法改正問題があり、GHQ民生局の理想主義的な若手弁護士達が一週間で作り上げたと言われる現憲法の素案を巡ってのやりとりである。白洲は憲法学者でもないので、裏方というか側面援助しかできないのだが、民生局の陰湿な手口で煮え湯を飲まされている。外務省に保存されている「白洲手記」に「・・(略)・・『今にみていろ』ト云フ気持抑ヘ切レス。ヒソカニ涙ス」と記されているという。また「日本は戦争に負けたが、アメリカの奴隷になったわけではない」等の名セリフを残している。

その後、白洲は商工省を改組し貿易に重点をおいた通商産業省を設立したり、サンフランシスコ平和条約の全権団顧問、公社民営化(専売公社・九電力分割)などに関わったが、吉田退陣後は、政治とは縁を切り、実業界に戻った。

敗戦直後の暗い時代にこんな気骨のある男がいたというのは、一服の清涼剤である。