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2024年8月15日木曜日

読書 「テレビの国」から(倉本聰)

       時代を俯瞰した脚本家     


著者:倉本聰
出版:産経新聞出版

エピソードや笑いの中にテレビ業界の視聴率のみを追及する姿勢を批判し、かつテレビ文化の衰退を憂い、そして自然への畏れと感謝を失くしつつある日本人への著者の直言のような気がしました。

構成としては、時代や視点となる場所と作品を結び付けた内容になっています。

第1章 昭和から平成、令和をつなぐ物語
「やすらぎの郷」「やすらぎの刻~道」
第2章 戦後日本を総括する物語
「北の国から」
第3章 東京を離れて見えた物語
「6羽のかもめ」「前略おふくろ様」「りんりんと」「幻の町」「うちのホンカン」「浮浪雲」
第4章 富良野がつないだ物語
「昨日、悲別で」「ライスカレー」「風のガーデン」
第5章 若き日の物語
「文五捕物絵図」「わが青春のとき」「君は海を見たか」「玩具の神様」「ガラス細工の家」
第6章 これからの人に贈る物語

内容は多岐に渡っていますので、全体的に纏めるのは難しいので、印象に残った箇所を列挙しました。

・「僕は黒木華さんとか好きですが、ああいう日本的な顔の人がなかなかいない。・・・(略)・・・みんながモデルみたいに美しい脚になってしまった。あれでは農業はできないです。八千草薫さんや吉永小百合さんの世代はあんまり細くない。でも、僕はしっかりとした脚の方が好きだし、体の構造的にも重心が低い方が理にかなっていると思うんです」

・僕の中で(「やすらぎの郷」の)一番のきっかけは、大原麗子さんのことでした。
あれほどの女優が孤独死って・・・。そのことがずっと僕の心の中にありました。

・「やすらぎの郷」が終わってから、浅丘さんと加賀さんに怒られました。「私たちは出番が多い割に、役として立つところがなかった」・・・(略)・・・申し訳ないと思いましたけど、あれだけ人数がいると忘れてしまうんです。その分、「やすらぎの刻~道」では、頭から頑張ってもらっています。

・「幻の町」は樺太から引き揚げた老夫婦の物語で、奥さんは田中絹代さん、夫役は笠智衆さんでしたが・・・笠さんはこの時70歳を超えていて「冬の小樽のロケなんてとても行けません」と断られたんです。すると絹代さんが笠さんに電話して「何言ってんの! 役者が撮影現場で死んだら本望でしょう」と説得してくださいました。笠さんにとって絹代さんは雲の上のスターみたいな存在でしたし、ラストにはその絹代さんとのキスシーンもあります。断れなくなって出てくれました。実際、笠さんはものすごく喜んでくれて、キシシーンの後でスキップしていましたけれど、あれは笠さんのアドリブだったと思います。
桃井かおりと笠さんをめぐる思いでもあります。撮影現場でかおりが珍しくしょんぼりしていたら「桃井さん、どうしました? ホームシックですか?」あの独特の熊本なまりで聞くわけです。それでかおりが「いえいえ」なんて答えたら、笠さんはニコニコしながら大きな声で、「抱いてやりたいんじゃが、(男として)もう役に立たんのじゃ」 これにはひっくり返って笑いました。ホントにしゃれています。
  
等々面白さ満載ですが、書ききれないので、ここで止めておきます。

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