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2024年7月15日月曜日

読書 運動しても痩せないのはなぜか(ハーマン・ポンツァー)

    人間は何のために運動をするのか?


著書:運動しても痩せないのはなぜか
―代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」
著者:ハーマン・ポンツァー
   (訳:小巻靖子)

衝撃的な本である。
コロナ騒ぎの間、家にこもりっきりで、体重が増えたので、減量のため昨年から運動を始めたが、この本を読んで少なからずショックを受けた。

最新の「消費カロリー測定法」の結果として、1日の総消費カロリーは、運動しても増えないことが分かった。
厳密に言えば、1日の消費カロリーは、基本的には、性別・年齢・体重(燃焼率の悪い脂肪を除く)によって、ほぼ一定に保たれている。(但し、BMRを超える過酷なフルマラソンのようなトレーニングをしている人たちは例外らしい)

脳の中では、堅実な企業の財務計算と同じように、カロリーの収支に関して厳格な管理がされていて、消費(支出)するカロリーは一定に保たれており、余分に入ってきたカロリーは貯蓄にまわされる。
要するに余分なカロリーは将来の飢餓に備えて脂肪として蓄えられていく、つまり太るということになり、減量するには、カロリーの摂取を減らすしか道はない。(カロリーを減らす内容は糖とか脂質とかは問わない)

では、消費カロリーが一定ならば、運動をしない場合はどうなるのか?
運動に使われずに余ったカロリーは、別のことに使われて、これが体に良くないこと、つまり余ったカロリーの使い道として、もっとも身体に悪いのが「炎症」を引き起こすことが、考えられるそうです。これがアレルギーや関節炎、動脈疾患のほか、他にはストレス等さまざまな「現代病」の原因となっているそうです。

運動すれば、これらのムダな炎症が抑えられ、健康が維持されるというわけで、運動は必ずしなければならない、と結論づけられる。
人体にとって運動は減量には効果はないが、健康には必要という結論に至る。

この消費カロリーが一定というのは、人類の進化の過程の産物である。
霊長類は進化の初期の段階で代謝を下げ、活動量が少なく長生きでゆっくりしたライフサイクルになった。他の哺乳動物に比べて1日のエネルギー消費量は半分ほどで、体が大きくはなっても脂肪はあまりつかない。(オランウータンやチンパンジーは、人間から見ると怠惰な生活を送っている)
その中でヒトは代謝を上げる逆の方向に進化する。
狩猟採集で余分に食物を集め、分け合うことで、生長、生殖、脳、身体活動すべてにより多くのエネルギーを使えるようになる。余分のカロリーは脂肪として蓄えるようになり、ヒトはどの類人猿よりも持久力が高くなり、毎日の運動が必要な体になった。

しかし他の霊長類より代謝量を上げたにもかかわらず、現代の先進国のように美食が溢れ、食欲をそそられる時代には、そのレベルの代謝量では低いようである。
そういう意味では、現代の環境に進化が追い付いていないと言えるが、一方では世界では貧困にあえぐ人々も大勢いる訳で、単純に代謝量が上ればすむ単純な問題ではなさそうです。

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