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2024年8月21日水曜日

読書 京 都 百 話(奈良本辰也)

     碩学が紐解くの京都のおとぎ話?


著者:奈良本辰也他
出版:角川ソフィア文庫

京都に「みやこ」が置かれて1200年の間に、各々の寺社や場所に纏わる歴史・逸話・伝説の数々を、碩学・奈良本辰也氏と高野澄氏、左方郁子氏、百瀬明治氏の方々によって書かれた本ですが、これまでの歴史本を越えた面白みがあります。
特に、逸話・伝説については、それぞれの紹介と併せて、それが出来上がった背景まで推測し、これまでの歴史学者は取り上げなかった硬軟織り交ぜた内容になっています。

例えば「五条大橋」の項では、戦前の教科書に掲載されていた小学唱歌の牛若丸と弁慶の話から始まる。
  京の五条の橋の上 大の男の弁慶は 
  長いなぎなた振り上げて 牛若丸めがけて 切りかかる

そして橋のたもとには、それを偲ぶ戦いの様子が人形のような形で象徴されて建てられている。

現在の場所に架かっている五条大橋は、豊臣秀吉全盛の頃に架けられたもので、それ以前に五条大橋と呼ばれていたものは、今の松原通りに架けられたものであり「源氏物語」に出てくるものがそれである。その後、橋の老朽化で、何度か架け替えられるのであるが、秀吉はその橋の位置を、六条坊門とした。だから六条大橋といってもよいのだが、五条の大橋はあまりにも由緒があり、簡単には六条大橋と呼べない歴史を紹介している。
そして、六条に架けられた橋を「五条大橋」と呼び、それと同時に六条坊門の通りが「五条通り」と呼ばれるようになった。一本の橋が、平安京いらいの通りの名称まで変更させてしまったのだ。

そして冒頭の弁慶と牛若丸の話に戻るのだが、弁慶と牛若丸が出あったのは、以前に架けられていた松原通りの大橋で、今の場所ではなかったという。
上記の小学唱歌の内容に戻り、二人の勝負の内容は、牛若丸が勝ったというものではなく、逆であったのではないかと推測している。何故ならこのような話は「義経記」にすら出て来ないからである。そこで再現された内容は、紙面も足りないので省略しますが、ご興味のある方は本書をお読みになって下さい。

碩学と言われた奈良本辰也氏が、小学校唱歌に出てくるような話にまで踏み込んだことに対する興味と、そのような話が満載の楽しい京都の歴史案内書です。京都にご興味のある方は是非一読をお薦めします。

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