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2020年5月13日水曜日

読書「旅のつばくろ」沢木耕太郎

       「旅のつばくろ」

評価:★★★★☆
著者:沢木耕太郎
出版:新潮社

沢木耕太郎の本は、常々読んでみたいと思っていたが、これまでに読んだのは「凍」の一冊のみ。でも本棚には、「深夜特急1」「旅する力」「テロルの決算」「危機の宰相」「檀」「キャパの十字架」が並んでいる。

私には、良い本を見つけた時に、今買っておかないと、生涯この本と再び出合う機会がないのではと思ってしまう強迫観念にいつも襲われ、ついつい本を買ってしまう。
その結果が、膨大な積読状態が発生し、壁の作り付けの本棚だけでは足りなくなって、新しい本棚が必要となってくる悪循環に陥っている。
昨今のように読書量が落ちてくると、処分しようとは思っているのだが・・・

この本は、新聞広告に出ていた日に、本屋さんでたまたま遭遇したので、買った次第です。
これまでの反省もあり、積読ではなく、買ってすぐに読み始めた。

内容は、JR東日本が発行している「トランヴェール」という旅の雑誌に掲載された旅のエッセイの中から41編を纏めたものである。
旅の行き先は「遊佐(山形)」「築館町」「盛岡」「奥多摩」「箱根」「小淵沢」「輪島」「龍飛岬」「蟹田」「三内丸山」等。
旅の途中に出会った人との交流や過去の経緯で訪れた土地での思い出等々が、1つが5ページ程にまとめられており、しかもこの著者らしく端正な文章なので、寝る前に軽く読むのに適している。

能登の輪島では、白米(しろよね)の棚田まで足を延ばした時に、香港からのカップルと出合う。著者は彼らに「中国本土の龍勝の棚田の方が、規模も壮大で、同じ棚田ならそちらの方が良いのではないかと訊ねたら、二人は口々にこう言った。自分たちも龍勝の棚田には行ったことがある。しかし、良く手入れされているこの白米の棚田により心を動かされる。そして、こんなことも言っていた。以前は中国本土にも旅行していたが、最近は日本にしか来ない。日本を旅行していると、心が落ち着くのだ、と。」
・・・等々、出会った人々との心温まる交流が随所に散りばめられている。

肩の凝らない本として、一読をお勧めします。

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