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2023年3月16日木曜日

読書 おどろきのウクライナ(橋爪大三郎・大澤真幸)

  社会学者によるウクライナ戦争と巨大化する中国資本主義の謎

著者:橋爪大三郎・大澤真幸(対談)
出版:集英社新書

タイトルは「おどろきのウクライナ」だが、内容は、「アフガニスタンからのアメリカの撤退」「ウイグル問題と中国の資本主義」、「ロシアのウクライナ侵攻とその背景」と多岐に渡り、その時々の国際問題についての二人の対談を纏めたもの。ウクライナ問題以外もあるが、内容は決して「羊頭狗肉」ではなく、逆にかなり刺激に飛んだものになっている。

ロシアのウクライナ侵攻を始め、過去の国際問題については、これまで政治学者が主に、さらに経済学者が論じてきたが、社会学者が論じると、民族問題、宗教問題、歴史問題、文化問題さらには指導者の深層心理などの視点が入り混じり、これまでの論者と違った面白い内容になった。

またこの二人の対談は以前に読んだ「ふしぎなキリスト教」と同様に、対談という真剣勝負のような雰囲気の中で、できかけのアイデアが、相手に触発されて「形」になっていく、その生成の現場を味わうことが出来る魅力があります。

本書の出だしから、刺激的だった。
「ウクライナ戦争が始まった。西側世界の人びとは、おどろいた。まさかと思った・・・(略)・・・人びとはなぜ、おどろいたのか。それは自明だと思っていた前提が、あっさり崩れさったから・・・自由と人権と民主主義と法の支配と・・・(略)・・・世界はだんだんましな場所になってく。―そういう思いを共有しない異質な他者がいる。もしかしたら、世界の本質は、その異質な他者の方がよく見えているのかも知れない」
「大事なのは、この世界に隠れている、(真っ赤に噴出する)マグマのありかを突き止めること。そして、実はもう始まっている、「ポスト・ウクライナの世界」を見極めることだ」

本書の論点をざっくりと纏めると、以下のようなものです。
1.アフガニスタン問題では、
 ・アメリカの凋落
 ・イスラムの考え方とナショナリズム
2.中国のウイグル問題では、
 ・資本主義には二つある? 
 ・中国の権威主義と資本主義の親和性は本物か?
3.ウクライナ問題では、
 ・ロシアはヨーロッパではないのか?
 ・ロシアやプーチンの背景に横たわる、西欧へのコンプレックスとルサンチマン
4.ポスト・ウクライナ問題では、
 ・グローバル経済の残酷さ
 ・アフリカ、ラテンアメリカやインドはなぜ棄権したのか?
 ・世界が戦国時代に見えてくる
 ・豊かな国への切符
 ・ポスト・ウクライナ戦争の新世界

等々、非常に知的好奇心を刺激してくれる面白い内容です。
寝る前に読むと、脳が興奮して眠れなくなるので、昼間に読むことをお勧めします。

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