往年のバックパッカーの老後の旅立ち
沢木耕太郎の旅といえば、バックパッカーのバイブルとでも言える、海外を旅する「深夜特急」のイメージが強いが、本著は国内の紀行エッセイ。
著者のノンフィクションの作品群は硬質な文章を淡々と積み重ねていくイメージだったが、この作品には、それとは違って年齢と共に丸くなったような等身大の著者の姿が浮かびあがってくる。
目的地だけを定めて、後は成り行きに任せる旅のスタイルは、若い時と変わっていないようだ。そこには、偶然がもたらした出会いがあり、喜びがある。
16歳に初めて旅に出た東北一周の跡を辿り、デビューしたての頃に過去の文豪に憧れて逗留した伊豆を訪ね、過去を振り返りながら、時間を気にしないで、自由気ままな旅の楽しみを堪能させてくれる。これまでのノンフィクションは、本人が登場しても中心は他人だったが、本著は自分自身について語っている。寝る前の読書に最適です。
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